chibinova

"ベタ"という単語がやたらと連発されるのは、きっと自分が取るに足らない存在だということに怯える人間が多いからだろう。そこまで闘魚マニアがいっぱいいるとも思えないし。けれど実際、取るに足らない作品だって、掃いて捨てるほどあるのも確か。トンガリキッズのみなさんは、それがお気に召さないらしい。岩井俊二の『Love Letter』を捕まえてベタだと言うか、『リリィ・シュシュのすべて』を捕まえてベタだと言うか、そんなこと、おれには関係ない。それが大映ドラマであろうと、昨今流行りの韓国産メロドラマだろうと、おれの知ったことではない。きっとお前の葬儀を指して、ベタだな〜って笑ってくれるよ、みんな。嬉しいだろ?お前がずっとやってきたことだ。ニヤケたツラが、真顔へと還る瞬間。ロキノンやスヌーザで散々しごき立てたなら、精液でベトベトになった手で、目の前にある鏡を叩き割ってみろ。乳白色と深紅の織り成すグラデーションが、きっと鈍い痛みをゆっくりと伝えてくれるよ。その刹那、お前は陣痛に喘ぐ、遠い日の母親とシンクロできるかもしれない。枯れ葉がゆっくりと地面へと舞い落ちるように、意識を閉じてみればわかる。コマ送りでフラッシュバックする憂鬱。