chibinova

からくりをとかせてもらおうやないか?

ジャック・ケッチャム隣の家の少女』読了。『ありがとう』や『リリイ・シュシュのすべて』とは違い、最悪の読後感。この小説に限って言えば、「神様はいない。福音はない。奇跡はない。(ジサツのための101の方法)」。虐待を受けて育った人にはわかると思うけど、暴力の描写そのものより、ボロボロになって、真っ暗な空間に閉じ込められているときの感覚や、幼さゆえ、自分が悪いせいでこんな目にあうのだと思い込む自責の念、そして徹底的に惨めな気分のときに漏れ聞こえてくる、近隣の家庭の生活の音など、そういったものの描写に胸が詰まった。そしていま、わたしの頭の中では、怒号、泣き叫ぶ声、ものが壊れる音、憎悪に燃える目、何度も何度も許しを乞う、怯え切った震える声などが、確かな質量をもって鮮明にフラッシュバックしている。「世界は人を愛していない。(CARNIVAL)」。当時は、ずっとそう思ってた。抗うすべをもたない自分を助けようとしないばかりか、むしろ知人達はわたしをからかった。こいつら、いつか皆殺しにしてやる、本気でそう思ったものだった。そしてわたしも大人になり、岸和田の少年のニュースを聞いた時、まるで対岸の火事のように、ただ傍観するだけだった。そんなのは、同じ被虐者として、あまりにも惨めだ。だから、いま自分にできることをしよう。どうせ虐待の事実からは、一生逃れられないのだ。悲しい連鎖を断ち切れるように、強く生きよう。